お知らせiPS細胞ストック由来血小板が企業主導治験へ

2021.04.26
研究活動
1.概要

公益財団法人京都大学iPS細胞研究財団(所在地:京都市左京区)は、株式会社メガカリオン(注1)、京都大学医学部附属病院、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)が連携して実施するヒトiPS細胞由来HLAホモ型血小板(開発コード:MEG-002)の企業治験計画に参画してきました。
(参考:「株式会社メガカリオンから企業治験に用いるiPS細胞由来血小板の製造を受託しました」

この度、株式会社メガカリオンから提出された治験計画届について、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の調査が終了し、今後、京都大学医学部附属病院をはじめとする複数の医療機関で治験実施に向けた準備が進められます。

当財団はこの治験において、ヒト(同種)iPS細胞由来血小板と、その非臨床安全性評価に用いる製品の製造と品質評価を担います。

2.背景

京都大学医学部附属病院血液内科 髙折晃史教授とCiRA 江藤浩之教授のグループは、これまでにiPS細胞由来血小板(注2)を使った臨床研究を実施し、iPS細胞由来の血小板製剤の安全性について検証を行っています(CiRAニュース 2020年3月25日)。この臨床研究は自家移植であり、企業での製造方法の確立と上市を目指すうえでは、単一の細胞で多人数に移植可能となる同種移植での治験が必要でした。

3.治験について

血小板減少症(注3)の患者さんを対象に、「MEG-002」の安全性の確認と有効性の推定を行う予定です。 「MEG-002」は、当財団(当時はCiRA)より提供を受けたiPS細胞から作製された、日本人において最も発現頻度が高いHLA型を有する血小板であり、開発にあたっては同研究所の江藤浩之教授等が発明したヒトiPS細胞から血小板を産生する技術を用いています。
なお、治験製品の製造はCiRA_Fが担い、治験は京都大学医学部附属病院をはじめとした複数の医療機関で実施を予定しています。

4.関連情報リンク

・メガカリオンニュースページ:
 http://www.megakaryon.com/dataroom/pdf/mega_release_20210426_jp.pdf
・京大病院ニュースページ:
 https://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/info/20210426.html

用語説明

注1 株式会社メガカリオン
本社:京都府京都市下京区、代表取締役社長:赤松 健一
URL:http://www.megakaryon.com/
CiRA江藤浩之教授等の発明によるヒト iPS 細胞から血小板を産生する技術の臨床応用を目指して2011年に設立。ヒト iPS 細胞由来血小板製剤を工業的に大量生産することによって、世界の医療現場へヒト iPS 細胞由来血小板製剤を供給することを目指しています。

注2 ヒトiPS細胞由来血小板
ヒトiPS細胞から分化させた巨核球前駆細胞に3つの遺伝子を導入することで得られる凍結保存可能な不死化巨核球細胞をマスターセルバンク化し、このマスターセルバンクから培養した巨核球を成熟させることによって血小板を産生します。

注3 血小板および血小板減少症について
血小板は血液中の細胞成分のひとつであり、巨核球と呼ばれる細胞から作られ、全身を循環し、血管壁が損傷した際に傷口に集まって止血する役割を持っています。血小板減少症とは血中の血小板数が少ない状態をいい、血小板数が一定数以下となった場合や出血の危険性が高いと認められる場合には、輸血用血小板製剤での治療が行われます。

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