iPS細胞の大量製造に必要な培養環境の実現を目指して
再生医療や病気の原因解明、創薬への活用が期待されているiPS細胞。現在世界中の研究者が、一日でも早く多くの患者さんの元へ新しい医療を届けるべく研究を進めています。iPS細胞の研究開発・臨床応用には大量の細胞を必要とするため、安定して細胞を培養できる環境が重要です。
iPS細胞を培養するためには、培養容器の表面にiPS細胞を接着させる「足場材」が必要です。通常は「タンパク質足場材」が使用されますが、塗布時にムラが生じて品質維持が難しいという課題があります。塗布した後も、足場材が培地に溶出したり、熱変性したりと、長期保管ができないため、培養直前に塗布しています。
プラスチック足場材が、2つのソリューションを提供する
「水に溶けない」ことと、「熱で変性しない(安定している)」という2点が特徴です。
「水に溶けない」ため「均一な培養表面」を可能にし、「熱に安定」であるがゆえに「長期安定保管」も確保できます。これまで培ってきた技術を活かしながら「細胞に最適な設計」を実現しました(プラスチック足場材の査読付き原著論文があります。是非ご覧ください)。この「プラスチック足場材」は工業的なスケールアップや細胞製造のオートメーション化に有用であり、再生医療に利用するiPS細胞・間葉系幹細胞を製造する際のキーマテリアルになると考えています。
私たちは、研究者や企業の皆さまとともに大量・自動培養を可能にしていくことにより、iPS細胞を用いた医療に貢献していきます。
[プラスチック足場材文献]
Shimizu, E., Iguchi, H., Le, M.N.T. et al. A chemically-defined plastic scaffold for the xeno-free production of human pluripotent stem cells. Scientific Reports 12, 2516 (2022).