学生の時、iPS細胞の誕生を間近で見ていました。

細長い皮膚細胞が丸く艶めいた多能性幹細胞に変わる様をみて、驚くとともにこのiPS細胞をこれまでの技術で治らなかった病気の治療に応用し、医療の発展に貢献したいと思いました。

この思いは、細胞治療製品の開発に携わる今も持ち続けています。

武田薬品に入社し、低血糖発作で苦しむ一型糖尿病の患者さんに対する細胞治療を目指してiPS細胞から膵臓の細胞を作る基礎研究を行いました。

数人で小さな培養皿を使って進める当時の研究は手探りで目的の細胞ができず、困難続きでした。その後、iPS細胞技術を革新的な治療法へと研究開発するプロジェクトが開始され、CiRA、開発部門と共同で研究できるようになりました。

関わる人も、それまでの10数倍になり、CiRA財団から高品質なiPS細胞を提供いただき、研究が飛躍的に進みました。

今では、分化誘導度と精製レベルが高い細胞が大きな培養器で安定して作製できています。

私たちのiPS細胞技術を当たり前の医療にするためには適切に保管し、現場に届ける技術、製造や品質管理の高いコストなど、まだまだ課題が散見されます。

私は、これらの問題を早期解決したいと思い、スピンアウトベンチャー、オリヅルセラピューティクスに転籍しました。

関連企業様とともに、これらを解決し、１日でも早くiPS細胞による安全な治療を患者さんに喜んでいただける形でお届けできるよう取り組んでまいります。