my iPS ®プロジェクト

自家iPS細胞の臨床応用を促進するための技術開発を行っています。

現在、当財団が提供しているiPS細胞は、作業員が手作業で製造しており、1ラインの製造コストに数千万円かかっています。

my iPSプロジェクトでは、自家iPS細胞の製造コストを抑えることを目指して、企業との共同研究で閉鎖型自動培養装置の開発を進めています。

my iPS(マイiPS)®プロジェクトの概要

my iPSプロジェクトでは、患者さん自身の細胞から作る「自家iPS細胞」を使った再生医療の実現を目指しています。
将来、iPS細胞を用いた再生医療が実用化された時に、自分の細胞からつくる「自家iPS細胞」をもとに移植用細胞を製造すれば、
遺伝的に同じ細胞を使えるため、拒絶反応のリスクを最小限に抑えられると期待されています。一方で、現在のiPS細胞の製造は、
専用施設で作業員が手作業で行っており、1人あたり数千万円という高い製造コストが大きな課題です。
当財団が提供している「臨床用iPS細胞ストック」、いわゆる「他家iPS細胞」も、この製造方法をベースに作られています。
「他家iPS細胞」は、あらかじめ製造・品質評価・保管したiPS細胞を多くの患者さんに活用できるため、1人あたりの製造コストが
抑えられるという利点があります。しかし、患者さんの体質や疾患によっては、「他家iPS細胞」よりも、「自家iPS細胞」をもとに
移植用細胞を製造した方が治療として適しているケースも想定されます。そこで私たちは、人の手で行ってきた複雑な製造工程を
装置で自動化し、高品質かつ低コストで「自家iPS細胞」を製造できる技術の開発を進めています。将来的には、「自家iPS細胞」を
1人分あたり約100万円で研究機関や企業に提供できる体制の実現を目指しています

目標

最終的な目標は、将来、自家iPS細胞を用いた再生医療を「誰もが受けられる治療」へと広げることです。研究機関や企業を対象に、
1人分のiPS細胞を約100万円で提供できる仕組みを整え、2028年度中に自家iPS細胞の提供先による臨床試験開始を目指しています。
その実現に向けて、私たちは製造コストを抑えるための研究開発に加え、自動製造によって得られた細胞の安全性と有効性を確認する
必要があります。まずは当財団において、ヒトに使う前の「非臨床試験(安全性試験)」を実施し、共同研究機関である医療機関が実施する
臨床試験で安心して使えるかどうかを確かめます。

自動製造に向けた挑戦

これまで人の手で行っていた製造工程を、「閉鎖型の自動培養装置(細胞を汚染から守りながら自動で増やす装置)」で
自動製造できるように研究開発を進めています。 具体的には次のような取り組みです。


  1. iPS細胞の作製から必要な細胞への変化(分化)まで自動化する装置の開発
  2. 装置に適した3D培養の方法を確立
  3. 装置に組み込める試薬や資材の「キット化」
  4. 細胞を壊さずに確認できる「画像解析による品質検査」の開発

これらを実現することで、これまでより大幅に低コストで、しかも高品質な細胞製造が可能になります。

企業・研究者の方へ

iPS財団では、閉鎖型培養装置の開発や非破壊検査の仕組みづくりなどに取り組んでいます。安全性と有効性を確保しつつ、
コストを下げるために、一緒に挑戦してくださる企業や研究機関を募集しています。