新たなiPS細胞ストック提供開始

研究活動

センダイiPS細胞ストックコロニー

樹立したセンダイiPS細胞ストックのコロニー(細胞集合体)

1. ポイント

  • 本日4月5日より、新たな臨床用iPS細胞ストック「センダイウイルスiPS細胞ストック」 (以下、センダイiPS)の提供を開始しました。
  • 米国人ドナーの末梢血を元に、センダイウイルス(SeV)ベクター※注1 を用いて作製しました。
  • 日米欧のドナー適格性規制に対応した細胞株です。
  • 従来のストックに加え、臨床使用可能な株の選択肢が増えました。
  • 本ストックのドナーはHLA※注2 3座ホモではありません。

2. センダイiPSとは

これまで当財団が臨床用iPS細胞の樹立で使用していたエピソーマルベクター※注3 に代えて、センダイウイルス(SeV)ベクターを用いて樹立したiPS細胞です。米国の成人ドナーにご協力いただき、米国の認証を受けた施設で採血・検査した末梢血から作製しています。

3. センダイiPS提供開始の背景

当財団のiPS細胞ストック提供先の研究機関・企業の皆様から、「スクリーニング時より欧米の規制に適合したドナーより作製されたiPS細胞を使用したい」「用途によっては分化効率等が良いため、SeVベクターを用いて樹立したiPS細胞ストックを使用したい」とのご要望をいただいていたため、この度、新たなiPS細胞ストックとして製造いたしました。

4. センダイiPSストック提供について

詳細につきましては、「iPS細胞ストックプロジェクト_SeV」ページをご確認ください。

5. 今後の予定

この度提供を開始したセンダイiPSは、より高いニーズに応じるため、将来的には、センダイiPSにHLAゲノム編集を施し、免疫拒絶のリスクを低減したiPS細胞も提供する予定です。

6. 用語説明

注1)センダイウイルス(SeV)ベクター

ベクターとは遺伝子の「運び手」のことで、ウイルスやプラスミド(環状のDNA)がよく用いられています。ウイルスを使う方法は、一般的に遺伝子導入の効率は高いものの、その細胞毒性やゲノム障害性に問題があると言われていましたが、センダイウイルスベクターは、遺伝子がRNAであるため、標的細胞の核内に侵入せずゲノムに組み込まれないという特長を持っています。

注2)HLA

HLA:ヒト白血球型抗原(Human Leukocyte Antigen; HLA)。ヒトの細胞で自己かそうではないかを見分ける目印のようなタンパク質の総称です。白血球以外にも様々な細胞で存在しており、組み合わせは数万通りにもなります。大きくクラスI〜IIIに分けられ、特にクラスIにあるHLA-A、HLA-B、HLA-Cは細胞を移植したときの拒絶反応に大きく影響します。

注3)エピソーマルベクター

物質を細胞内に導入するために利用されるプラスミドベクターの一種。非ウイルス性であり、導入先の遺伝子に組み込まれないと考えられています。

お問い合わせ先

公益財団法人 京都大学iPS細胞研究財団(iPS財団)
企画推進室 広報グループ
TEL:075-312-3378
E-mail:contact*cira-foundation.or.jp
(お手数をおかけしますが、*を@に変えてください)

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