Uehiro Future Scientists Program 研修生インタビューVol.3
―患者さんのために病気を研究し続ける臨床医になりたい―
研修
今回、Uehiro Future Scientists Programに参加してくれたのは、カリフォルニア大学リバーサイド校で生物学を専攻する大学2年生のカリーナ・ジョセフさんです。将来は医師になることを目指しています。
アメリカでは医師を目指す場合、大学卒業後にメディカルスクール(日本の大学院)へ進学するのが一般的で、そこで4年間かけて基礎医学と応用医学を学びます。大学の学部生のときから医療機関でのボランティアや研究活動を通じた実践的な経験が求められるそうです。
「私は病院でボランティアをする代わりに、学外のプログラムで臨床医療アシスタント(Clinical Medical Assistant)の資格を取得し、アシスタント業務を通じて、医療分野に関わることができました」とジョセフさん。

カリーナ・ジョセフさん
カリフォルニア大学リバーサイド校
生物学専攻 2年
ジョセフさんは、インターンシップ・プログラム参加中にiPS細胞の培養やエピソーマルプラスミドベクターを用いたiPS細胞の樹立、ヒトの細胞に対してmRNAを導入する手順を習得しました。また、細胞の初期化に必要な因子の変異体を用いて、それらがiPS細胞の樹立効率にどのような影響を与えるのかについて調べる実験にも携わりました。
「研究経験が浅いため、本当にたくさんの質問をしました。こんな初歩的なことを聞いてもいいのかなと不安もありましたが、皆さんが快く答えてくださって、実験中も、『次はあなたの番よ!』と順番をどんどん回してくれました。本当にありがたかったです。」
ジョセフさんは、実際に実験に携わることで、各手順には目的や科学的な根拠があることを学んだそうです。
「特にmRNAが細胞の初期化にどのように関わっているかを学びました。生物学は、いろいろなことに繋がっているところが魅力だと思っています。自分自身や患者さんの体の仕組みや働きについて学べますし、新しい技術が次々と生まれる分野でもあります。いろいろなキャリア形成を描けるのも魅力です。」
ジョセフさんはこのプログラムに参加するまで実際にiPS細胞を見たり、触れたりしたことはありませんでした。しかし、iPS財団を知ったことがきっかけで、iPS細胞に興味がわき、このインターンシップ期間中もiPS財団の論文を読み、iPS細胞を用いた研究開発への理解が深まったそうです。
「iPS細胞に関連した実験に携わる機会をいただき、iPS細胞を用いた再生医療の大きな可能性を感じました。臨床医療アシスタントとしての経験とこのプログラムで学んだ内容を結びつけられたのはとても有意義なことで、1カ月間、毎日わくわくした気持ちで過ごすことができました。」
ジョセフさんの目標は、医療機関で患者さんの診療をしながら、医学研究も行う臨床医です。日本では、臨床研究医と呼ばれています。
「私の場合、最初から研究者を目指すと、無限にある研究テーマに圧倒される気がします。医師として臨床現場で患者さんと接する中で生まれる疑問をベースにすれば研究テーマも絞れて、直接患者さんに役立つ研究ができると思っています。」
日本には幼い頃に旅行で訪れたことがあり、今回の滞在中にも人々の優しさに触れたと話してくれました。
「電車や新幹線での移動には慣れているつもりでしたが、それでも日本に来てすぐの頃、電車を乗り間違えて困りました。近くに座っていた方がそれを察してくれて、英語が話せないなか一生懸命教えてくださいました。本当に優しい人ばかりだと思いました。」
奈良県まで鹿を見に行くなど週末もアクティブに過ごし、日本での良い思い出もアップデートされたようです。

当財団では、引き続き、「Uehiro Future Scientists Program」を通じて大学生・大学院生のキャリア形成を支援してまいります。