Uehiro Future Scientists Program 研修生インタビューVol.6
―どのようにして複雑な神経システムが生まれるのかを理解したい―
研修
今回ご紹介するのはフランスのパリにあるエコール・ノルマル・シュペリウール (ENS)ーPSLの大学院で神経科学の研究を行っているアナ・ダニセルさんです。2月中旬から4月半ばまでUehiro Future Scientists Programに参加しました。

ダニセル・アナさん
エコール・ノルマル・シュペリウール(ENS) - パリ研究文化大学(PSL)
神経科学専攻 修士課程1年
Q: ENSーPSLでは、どのようなことを研究していますか?
ダニセル:
私はENSーPSL神経科学の修士課程に在籍しており、バイオインフォマティクス(生命情報科学)や発生生物学の科目もあわせて履修しています。修士1年のときに、神経科学、発生生物学、データ解析、化学といった、幅広い分野の科目を受講しました。
ENSーPSLに進学する前は、ソルボンヌ大学で生物学と化学の2つの学士号を修了しました。分野横断的なバックグラウンドを築き、神経科学と化学についての知識もさらに深めたいと考えるようになりました。例えば、生物無機化学を受講しましたが、医療における有機金属化合物の役割など、生物学と化学のつながりが示されていて興味深く感じました。
Q:ENSーPSLで神経科学を学ぼうと思ったきっかけは何ですか。
ダニセル:
ずっと脳そのもの、特に神経変性疾患に強い関心がありました。ENSーPSLでは分野横断的な基盤をしっかりと築くことができるので、ここで神経科学を学ぼうと考えました。
ソルボンヌ大学の学部生のとき、初めて神経システムの複雑さや、その発達や機能不全を理解することの難しさについて知りました。これが現在の研究テーマへの関心を一層強めるきっかけとなりました。
Q:Uehiro Future Scientists Programに参加しようと思った理由は何ですか。
ダニセル:
修士課程1年のインターンシップとして、細胞培養、特にiPS細胞から作製される脳オルガノイドの作製や研究について、実践的な経験を積みたいと考えていました。そこで、私の関心と非常に近い研究を行っている林洋平先生(研究開発センター・ユニット長)に連絡しました。
林先生からこのプログラムを紹介していただきました。自分の関心のある研究テーマに取り組みながら、先生の研究チームの一員として研究できる、とても貴重な機会だと感じました。幹細胞生物学や再生医療の分野の国際的な研究環境の中で、より高度な実験技術を身につけられる点にも強く惹かれました。
Q:このプログラムでは、どのような実験に取り組みましたか。
ダニセル:
主にiPS細胞から細胞や脳オルガノイドを培養することに関連した実験に取り組みました。無菌条件下でiPS細胞を維持・継代する方法や、脳オルガノイドの作製方法やその過程を観察する方法を学びました。
さらに、分子・細胞レベルでの解析手法についても実践的な経験を積むことができました。例えば、遺伝子発現を解析するためにRT-qPCR法を行い、またFACS(蛍光活性化セルソーター)を使って細胞集団の特徴を解析しました。プロジェクトが進むにつれて、追加の実験や解析手法にも関わることで、技術的なスキルを広げていきたいと考えています。
Q:このプログラムに参加して、どのような感想を持ちましたか。
ダニセル:
とても実りの多い経験ができました。林先生と研究チームのメンバーから直接教えていただきましたが、インターン期間を通してYan先生(研究開発センター・研究員)には本当にお世話になりました。メンバーが互いに支え合っている研究環境で研究に参加できたことをとてもありがたく感じています。
また、研究活動以外でも、日本での生活はとても楽しかったです。このプログラムに参加して、研究とプライベートの両方で大変充実していました。
Q: 日本で生活して、研究以外で印象に残っていることは何ですか。
ダニセル:
今回、初めて日本に来ました。研究活動以外では、大阪や京都を散策したり、周辺の山々をハイキングしたりして、とても楽しかったです。印象深かったのは、桜の季節の週末に奈良の吉野山を訪れたときのことです。約3万本の桜が満開になっている様子を見ることができました。
Q:このプログラムで学んだことを、どのように活かしていきたいですか。
ダニセル:
このプログラムで得た知識やスキルを、現在と将来の研究活動の両方に活かしていきたいです。大きな成果としては、科学的に厳密に実験を設計し、実行する方法についてより深く理解できるようになったこと、そして細胞培養や脳オルガノイドに関する実践的な技術を身につけられたことが挙げられます。
これらのスキルは、現在の研究に直接役立ちますし、博士課程に向けた準備にもつながります。加えて、幹細胞生物学や神経科学への関心がさらに深まりました。今後も研究者として、こうした分野を引き続き探究していきたいと思っています。
Q:今後、どのようなキャリアを目指していますか?
ダニセル:
ENSーPSLで修士課程を修了した後は、発生生物学と神経科学が交差する領域で博士課程に進むことを目指しています。現在は、発生の過程で、どのようにして複雑な神経システムが生まれるのかを理解することに興味を持っています。
博士課程修了後は、海外でポスドク(博士研究員)として研究を続けるつもりです。理想としては、国際的な研究環境で研究したいと思っています。今回の滞在を通じて、研究活動の雰囲気や全体としての日本での経験がとてもよかったので、日本で研究することも選択肢の一つです。

当財団では、引き続き、「Uehiro Future Scientists Program」を通じて大学生・大学院生のキャリア形成を支援してまいります。