研究・活動報告 発表論文
研究発表
発表論文
日本語で論文の要点を付記しています。
財団著者を下線で示しています。
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■■2022年■■
Improved Sendai viral system for reprogramming to naive pluripotency
Kunitomi A , Hirohata R , Arreola V , Osawa M ,Kato T , Nomura M , Kawaguchi J , Hara H , Kusano K , Takashima Y , Takahashi K , Fukuda K , Takasu N , Yamanaka S
Cell Reports Methods:doi.org/10.1016/j.crmeth.2022.100317
優れた多分化能を持つヒトのナイーブ型iPS細胞を迅速に作製する方法を発明本研究では新たなセンダイウイルスベクターを用いることで、これまで樹立が困難であった細胞種や培養条件からヒトナイーブ型iPS細胞を樹立できるようになっただけでなく、早期かつ簡便なセンダイウイルスベクターゲノムの除去ができることが分かりました。その結果より優れた多分化能を持つヒトナイーブ型iPS細胞を作製することに成功しました。近年ナイーブ型ヒト多能性幹細胞はその高い多分化能を活用してヒト初期胚の研究に多く用いられており、本法はこれらの研究の発展に貢献することが期待されます。
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A clinical-grade HLA haplobank of human induced pluripotent stem cells matching approximately 40% of the Japanese population
Yoshida S , Kato TM , Sato Y , Umekage M , Ichisaka T , Tsukahara M , Takasu N , Yamanaka S
Med: doi.org/10.1016/j.medj.2022.10.003
日本人の約40%に適合する再生医療用HLAホモドナー由来iPS細胞ストックを構築当財団が取り組む「再生医療用iPS細胞ストックプロジェクト」の10年間のまとめ論文です。構築したiPS細胞ストックの品質評価データ、製造に使用した試薬・資材、ドナーリクルートやドナー適格性確認の方法、iPS細胞ストックの提供先が実施した臨床試験の概要等をまとめています。品質評価試験の結果、選択されなかったiPS細胞の詳細データなど、iPS細胞製造において課題となる結果も公開しています。
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Induced hepatic stem cells are suitable for human hepatocyte production
Nakashima Y , Miyagi-Shiohira C , Saitoh I , Watanabe M , Matsushita M , Tsukahara M , Noguchi H
iScience:doi.org/10.1016/j.isci.2022.105052
誘導肝幹細胞はヒト肝細胞の製造に適する初期化遺伝子を細胞へ導入するとiPS細胞を作ることができるが、元細胞から受ける影響や樹立後(1-20継代)のクローンの特徴はこれまでに分かっていなかった。ヒト肝細胞を初期化した際に、未分化マーカーと肝細胞特異的マーカーを調べた。その結果、肝細胞特異的マーカーを発現したコロニーが樹立後(1-20継代)に見つかり、琉球大学の野口洋文教授はこの細胞をiTS-L細胞(肝臓由来組織特異的幹細胞)と名づけた。iTS-L細胞は、腫瘍を作り難い利点があった。また分化誘導すると肝細胞様細胞になりやすい特徴が示された。 本成果は、自然科学、医学等の分野の科学雑誌であるiScienceへ掲載された。
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Semi-3D cultures using Laminin 221 as a coating material for human induced pluripotent stem cells
Nakashima Y , Yoshida S , Tsukahara M
Regenerative Biomaterials :doi.org/10.1093/rb/rbac060
ヒト誘導多能性幹細胞のコーティング材料としてラミニン221を用いたSemi-3D培養ヒトiPS細胞を自動化で樹立するためにコロニーピックを行わないバルク法が注目されている。 しかし、バルク法では遺伝子導入ベクターが継代後長期に残存しやすい課題があった。我々は、培養ディッシュのコート材に用いられる、ラミニン221と呼ばれるタンパク質に着目した。その結果、ラミニン221がヒトiPS細胞の未分化状態を維持し、 さらに遺伝子導入ベクターを排除しやすいことを発見した。
本成果は、生体材料の専門誌であるRegenerative Biomaterialsへ掲載された。 -
Adhesion Characteristics of Human Pancreatic Islets, Duct Epithelial Cells, and Acinar Cells to a Polymer Scaffold
Nakashima Y , Iguchi H, Takakura K , Nakamura Y , Izumi K , Koba N , Haneda S , Tsukahara M
Cell Transplantation : doi.org/10.1177/09636897221120500
ポリマー足場材料に対するヒト膵臓から単離された各種細胞の接着特性糖尿病患者に対する細胞治療方法として、膵島移植や iPS細胞を用いた治療方法が注目されている。 しかし、これまでヒト膵島を高く生存維持したまま培養することは難しかった。 積水化学工業株式会社は、ヒト膵島の生存を飛躍的に高める化学コーティングプラスチックを開発した。 株式会社東海ヒットは、ヒト膵島を培養しながら測定できるperifusion assay機器を開発した。 当財団と、上記 2社は共同研究を行い、新規のヒト膵島の培養維持、および測定方法を開発した。 本成果は、細胞移植の専門誌である Cell Transplantationへ掲載された。
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Laminin-511 Activates the Human Induced Pluripotent Stem Cell Survival via α6β1 Integrin-Fyn-RhoA-ROCK Signaling
Nakashima Y , Tsukahara M
Stem Cells and Development : doi.org/10.1089/scd.2022.0010
ラミニン511はFyn-RhoA-ROCKシグナル伝達を介してヒトiPS細胞の生存を高める臨床用iPS細胞は、シングルセル播種と呼ばれる細胞 1つ1つをバラバラにして播く独特の培養方法が取り入れられている。しかし、iPS細胞は細胞死を起こしやすく、これまで臨床用iPS細胞をシングルセル播種できる仕組みは分かっていなかった。我々は、培養ディッシュのコート材に用いられる、ラミニン511と呼ばれるタンパク質に着目した。 その結果、ラミニン511タンパク質が細胞死を制御するシグナル伝達経路(Fyn-RhoA-ROCK) へ作用していることを発見した。本成果は、幹細胞の専門誌であるStem Cells and Developmentへ掲載された。
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Generation of hypoimmunogenic induced pluripotent stem cells by CRISPR-Cas9 system and detailed evaluation for clinical application.
Kitano Y, Nishimura S, Kato T, Ueda A, Takigawa K, Umekage M, Nomura M, Kawakami A, Ogawa H, Huaigeng X , Hotta A , Takasu N, Tsukahara M*
Molecular Therapy - Methods & Clinical Development: doi.org/10.1016/j.omtm.2022.05.010
CRISPR-Cas9を用いたHLAゲノム編集iPS細胞の作製方法と臨床応用に向けた詳細評価今回の研究により、臨床用iPS細胞におけるCRISPR-Cas9を用いた同時多重HLAゲノム編集の課題と解決策について、基盤技術となる成果を得ることができました。これは、ゲノム編集した低免疫原性iPS細胞を臨床応用につなげるために、ゲノム解析を含む、多角的な品質評価試験が重要であることを示しています。本成果に基づいて、臨床用のHLAゲノム編集iPS細胞を早期に提供できるよう、京都大学iPS細胞研究財団(CiRA_F)細胞調製施設にて製造を進めています。
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A chemically-defined plastic scaffold for the xeno-free production of human pluripotent stem cell
Shimizu E, Iguchi H, Le M N T, Nakamura Y, Kobayashi D, Arai Y, Takakura K, Benno S, Yoshida N, Tsukahara M, Haneda S, Hasegawa K
Scientific Reports volume 12: 2516 doi.org/10.1038/s41598-022-06356-8 (2022)
多能性幹細胞のゼノフリー生産のための化学合成足場材現在、多能性幹細胞 (iPS細胞、ES細胞) の接着培養には足場材が使用されていますが、新たにPVBポリマーと短鎖ペプチドからなる化学合成足場材を開発しました。
この足場材は、従来の足場材とは違って生物由来成分を含まないため、安定性が高く、室温保管が可能です。今後、臨床用ヒト多能性幹細胞の自動大量培養への活用が期待できます。 -
■■2021年■■
Grafting of iPS cell-derived tenocytes promotes motor function recovery after Achilles tendon rupture
Nakajima T, Nakahata A, Yamada N, Yoshizawa K, Kato TM, Iwasaki M, Zhao C, Kuroki H, Ikeya M
Nature Communications 12: 5012 doi: 10.1038/s41467-021-25328-6 (2021)
アキレス腱断裂後のiPS細胞由来腱細胞移植による運動機能の回復促進アキレス腱を損傷したラットにiPS細胞から誘導した腱細胞を移植すると、アキレス腱の再生が促進され、運動機能が優位に回復することを示した論文です。 当財団では、iPS細胞から腱細胞が作られる過程を詳細に調べるシングルセルRNAseq(1細胞レベルの遺伝子発現)解析の技術支援を行いました。
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Transplantation of human autologous synovial mesenchymal stem cells with trisomy 7 into the knee joint and 5 years of follow-up
Mizuno M, Endo K, Katano H, Amano N, Nomura M, Hasegawa Y, Ozeki N, Koga H, Takasu N, Ohara O, Morio T, Sekiya I
STEM CELLS Translational Medicine doi:10.1002/sctm.20-0491(2021)
トリソミー7を有するヒト自家滑膜間葉系幹細胞の膝関節への移植と5年間の追跡調査変形性関節症の患者さんの膝から採取した滑膜間葉系幹細胞では7番染色体にトリソミー(トリソミー7)*1が見つかることがあります。 トリソミー7を有する自家滑膜間葉系幹細胞を膝へ移植した場合の安全性について、ヒトへの臨床試験にて検証した結果、 トリソミー7がない間葉系幹細胞を移植した場合の安全性と同等であることが分かりました。
*1 通常は2本の染色体が3本になった状態 -
CiRA iPSC seed stocks (CiRA's iPSC Stock Project)
Hanatani T, Takasu N
Stem Cell Research Volume 50 102033 doi :10.1016/j.scr.2020.102033 (2021)
CiRA iPS細胞のシードストック (CiRA iPS細胞ストックプロジェクト)財団で行っているiPS細胞ストックプロジェクト(移植時に拒絶反応の起きにくいiPS細胞を製造・保管・提供する)の概要と今後の計画などを紹介しています。
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■■2020年■■
Pre-clinical study of induced pluripotent stem cell-derived dopaminergic progenitor cells for Parkinson's disease.
Doi D, Magotani H, Kikuchi T, Ikeda M, Hiramatsu S, Yoshida K, Amano N, Nomura M, Umekage M, Morizane A, Takahashi J
PMID: 32133731 doi:10.1111/cas.14374
臨床用iPS細胞を用いたパーキンソン病治療の非臨床研究臨床用のiPS細胞ストックから作製したドパミン神経前駆細胞(ドパミン神経になる前の細胞)を使用した、パーキンソン病に対する細胞移植治療の医師主導治験のための非臨床安全性・有効性試験の実施報告です。
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HLA-Matched Allogeneic iPS Cells-Derived RPE Transplantation for Macular Degeneration
Sugita S, Mandai M, Hirami Y, Takagi S, Maeda T, Fujihara M, Matsuzaki M, Yamamoto M, Iseki K, Hayashi N, Hono A, Fujino S, Koide N, Sakai N, Shibata Y, Terada M, Nishida M, Dohi H, Nomura M, Amano N, Sakaguchi H, Hara C, Maruyama K, Daimon T, Igeta M, Oda T, Shirono U, Tozaki M, Totani K, Sugiyama S, Nishida K, Kurimoto Y, Takahashi M
J Clin Med 9(7): 2217 doi: 10.3390/jcm9072217 (2020)
滲出型加齢黄斑変性症に対するHLAホモ同種iPS細胞由来RPE移植財団で作製したHLAをホモで持つiPS細胞から作製した網膜色素上皮細胞を、HLA型が一致している滲出型加齢黄斑変性症の患者さんに移植。免疫抑制剤を使用せず、局所的にステロイドを投与し、移植後の安全性と免疫反応を評価した際のまとめです。
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Non-clinical efficacy, safety and stable clinical cell processing of induced pluripotent stem cell-derived anti-glypican-3 chimeric antigen receptor-expressing natural killer/innate lymphoid cells
Ueda T , Kumagai A , Iriguchi S , Yasui Y , Miyasaka T , Nakagoshi K , Nakane K , Saito K , Takahashi M , Sasaki A , Yoshida S , Takasu N , Seno H , Uemura Y , Tamada K , Nakatsura T , Kaneko S
PMID: 32133731 doi: 10.1111/cas.14374
卵巣がんに対するCAR-NK/ILC細胞治療の非臨床研究臨床用iPS細胞ストックから作製したNK/ILC細胞(自然免疫細胞の一種)を使用した、卵巣がんに対するCAR-NK/ILC細胞治療の非臨床安全性/有効性の実施報告です。
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■■2019年■■
Overview: an iPS cell stock at CiRA
Umekage M, Sato Y, Takasu N
Inflamm Regener 39: 17 doi: 10.1186/s41232-019-0106-0 (2019)
CiRAで提供しているiPS細胞ストック2018年前半時点での再生医療用iPS細胞ストックプロジェクトの進捗状況を、製造管理・品質管理を中心に記載した総説です。
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Targeted Disruption of HLA Genes via CRISPR-Cas9 Generates iPSCs with Enhanced Immune Compatibility
Xu H, Wang B, Ono M, Kagita A, Fujii K, Sasakawa N, Ueda T, Gee P, Nishikawa M, Nomura M, Kitaoka F, Takahashi T, Okita K, Yoshida Y, Kaneko S, Hotta A
Cell Stem Cell 24(4):566-578.e7 doi: 10.1016/j.stem (2019)
CRISPR-Cas9を用いたHLA遺伝子破壊によるiPS細胞の免疫適合性向上iPS細胞を用いた移植医療の際に想定される拒絶反応のリスクを軽減するため、ゲノム編集技術を用いて、拒絶反応が起こりにくいiPS細胞を作製した際のまとめです。
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■■2018年■■
Quality control guidelines for clinical-grade human induced pluripotent stem cell lines
Sullivan S, Stacey GN, Akazawa C, Aoyama N, Baptista R, Bedford P, Griscelli AB, Chandra A, Elwood N, Girard M, Kawamata S, Hanatani T, Latsis T, Lin S, Ludwig TE, Malygina T, Mack A, Mountford JC, Noggle S, Pereira L, Price J, Sheldon M, Srivastava A, Stachelscheid H, Velayudhan SR, Ward NJ, Turner ML, Barry J, Song J.
Regen Med 13:859 doi: 10.2217/rme-2018-0095 (2018)
臨床グレードのヒトiPS細胞株の品質管理ガイドライン当財団では、細胞調製施設(FiT)を中心とし、臨床用iPS細胞のグローバルな品質規格を定めるための活動を行っています。本論文内ではこの規格をガイドラインとしてまとめました。
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Report of the international conference on manufacturing and testing of pluripotent stem cells
Abbot S, Agbanyo F, Ahlfors JE, Baghbaderani BA, Bartido S, Bharti K, Burke C, Carlsson B, Cavagnaro J, Creasey A, DiGiusto D, Francissen K, Gaffney A, Goldring C, Gorba T, Griffiths E, Hanatani T, Hayakawa T, Heki T, Hoogendoorn K, Kawamata S, Kimura H, Kirkeby A, Knezevic I, Lebkowski J, Lin S, Lin-Gibson S, Lubiniecki A, O'Shea O, Pera M, Petricciani J, Pigeau G, Ratcliffe A, Sato Y, Schumann GG, Shingleton W, Stacey Chair G, Sullivan S, Svendsen CN, Trouvin JH, Vandeputte J, Yuan BZ, Zoon K.
Biologicals 56:67 doi: 10.1016/j.biologicals.2018.08.004 (2018)
多能性幹細胞の製造と試験に関する国際学会報告2018年6月に、国際学会(the International Alliance for Biological Standardization)での議論に参加した際の報告です。多能性幹細胞の製造と試験に関する内容をまとめています。
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北野優子、瀧川花穂、稲垣梓、加藤智朗、塚原正義、高須直子3D条件で樹立したiPS細胞(3D-iPSCs)の特性評価について
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中島義基、塚原正義マイiPS用細胞治療セット・プロトタイプの開発
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平野智子、坂井一郎、北野優子、塚原正義閉鎖型自動培養装置を使用した末梢血からのiPS細胞の樹立検証と課題
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菅原好美、平就介、岩山大輔、宮下野恵、塚原正義汚染管理戦略(CCS)に基づく次世代の細胞調製施設に向けた検討
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加藤智朗、大野モニカ、塚原正義体細胞初期化における質的不均一性
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梅景雅史、加藤智朗、大野モニカ、上田杏菜
心筋への分化抵抗性株の遺伝子発現解析
HLAホモストックを含む様々なiPS細胞株(計34種類)を心筋に分化誘導させた結果、株によって、分化誘導の効率に違いが見られた。遺伝子発現を調べた結果、CHCHD2遺伝子の発現低下により、心筋や神経への分化効率が低下することが示唆された。今後、こういった遺伝子の発現を調べることで、高品質のiPS細胞を識別する1つの手段になることが期待される。
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北野優子、瀧川花穂、廣畑糧子、塚原正義、高須直子
Overall 3D culture system 自己体細胞~iPS細胞~分化細胞 一気通貫 3D 培養システムの開発
iPS細胞を浮遊状態で樹立し(3D-iPSCs)、従来の接着培養(2D)で樹立したiPS細胞と比較した。その結果、2D/3DでiPS細胞の特性に顕著な差は認められなかった。また、iPS細胞の樹立から、拡大培養・心筋分化までを3D浮遊状態で実施可能であることを確認し、これにより、全行程を閉鎖型の自動培養装置で実施するための基盤が構築できた。
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中島義基、島崎紀子、塚原正義
アテロコラーゲンのマイクロキャリアを用いたiPS細胞の培養とその評価
iPS細胞を3D浮遊培養する手段として、マイクロキャリアの利用が考えられる。しかし、iPS細胞をマイクロキャリアのような曲面上に接着させることは、これまで困難であった。本研究では、アテロコラーゲンマイクロキャリアを用いることで、キャリア上でiPS細胞の樹立や拡大培養が可能であることを見出した。これにより、リアクターを用いてiPS細胞を大量培養するための基盤技術を構築した。
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吉田信介、塚原正義
iPS細胞の自動培養装置の性能評価と活用可能性の探索事例
自動培養装置(パナソニック社製)を用いて、様々な培養条件でiPS細胞を培養し、自動培養装置での培養・品質管理を行うことのメリット・デメリットを確認した。今後、iPS細胞製造の自動化に向けて、機器やプロセスの改良を進めると共に、自動化装置に適した作業の抽出など、さらなる検討を進めていく。
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塚原正義、高須直子
臨床用HLAゲノム編集iPS 細胞株の製造と技術的課題
ゲノム編集技術により、HLA-A/HLA-B/CⅡTAの3つの遺伝子を改変した、免疫拒絶リスクを低減したiPS細胞を作製した。この中で、ゲノム編集に伴い生じる課題(染色体異常や遺伝子欠損など)を見出し、これらの課題を克服するための検査方法を確立した。しかし、臨床用iPS細胞の品質管理には時間と労力が必要なため、効率よく作業を進めるため、一部の作業を自動化するなど、継続的な技術開発が必要である。
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平野智子、坂井一郎、塚原正義
細胞培養液、細胞入り容器へのX線照射の影響
再生医療において、施設内の衛生管理は最も重要なポイントの一つです。
分注された培養液や凍結細胞バイアルのように、エタノールなどの消毒液による拭き取り以外の方法では除菌が困難な材料があります。
ここでは、低エネルギー電子線照射により材料の表面のみを除菌する方法に着目し、細胞を培養するための培養液や細胞そのものに対するX線(電子線照射により副次的に発生する微量のX線)の影響について調べた結果をまとめました。
【ISSCR 2021】
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Krol R、Yamashita M、Tsukahara M、Takasu N
Single-cell cloning of human induced pluripotent stem cells automation and protocol optimization
医療用(臨床グレード)のiPS細胞を製造するための課題の一つに、単一細胞クローニングがあります。 単一細胞クローニングとは細胞の集団から1つの細胞を取り出し、その1つの細胞と同じ細胞を増やすために、培養していく作業のことです。 ここでは、Cytena UP.SIGHT™装置(Cellink社)を用いたシングルセルクローニングのプロセス開発における進捗状況を報告します。 この機械を使うことによって、容易に単一の細胞を取り出すことができます。
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【第20回日本再生医療学会総会】
加藤智朗、大野モニカ、高須直子、塚原正義多能性幹細胞培養における増殖優位性の獲得抑制の試み
ES細胞やiPS細胞などの多能性幹細胞においては、遺伝子に変異が入ることによって増殖のスピードが速くなり、細胞集団の大部分を占めてしまう「増殖優位性」という現象が知られています。本発表は、通常の酸素濃度(20%)と、それより低い5%の酸素濃度でES/iPS細胞を培養し、増殖速度や遺伝子発現の変化を比較した結果を示しています。
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出口 勝彰、加藤 智朗、坂野 香穂、櫻井 康雄、奈部谷 章、古賀 章浩、塚原 正義
網羅的単一細胞遺伝子発現解析を用いたiPS細胞樹立プロセスの検討
血液細胞からiPS細胞を樹立し、さらにiPS細胞の継代培養を繰り返していく中で、遺伝子の発現がどのように変化していくかを、網羅的な遺伝子発現解析の手法であるSingle cell RNA Sequenceで調べた結果を示したものです。
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北野 優子、西村 紗也可、徐 淮耕、野村 真樹、加藤 智朗、上田 杏奈、梅景 雅史、塚原 正義、堀田 秋津、高須 直子
HLAノックアウトiPS細胞の臨床応用を目指した作製条件検討~オン/オフターゲットの解析
他家移植の課題である免疫拒絶を回避するため、当財団では、HLA遺伝子の一部を改変(編集)したiPS細胞ストックの開発を精力的に進めています。本発表ではその製法および品質評価の条件検討を詳細に行い、目的とするHLA遺伝子編集のなされたiPS細胞株が得られたことを報告しています。
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Rafal P. Krol、塚原 正義、高須 直子
Large-scale expansion of iPS cells in Terumo BCT Quantum® closed automated cell culture system
これまで血球細胞や間葉系幹細胞などの大量培養で実績のある自動培養装置「Quantum®」(Terumo BCT)を用いてiPS細胞をうまく増殖させることが出来るか検討を行った結果、約50倍に増殖可能であったことを報告したものです。
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梅景 雅史、塚原 正義
iPS細胞維持培養の独自培地の開発
再生医療に用いるiPS細胞の維持培地は、多くが市販のものを使用していますが、(1)すべての成分が開示されていない、(2)供給者の事情などにより供給が不能となる可能性がある、といったリスクが存在しています。そこで、永続的かつ低価格での供給を目指して、当財団にてiPS細胞の維持培地の作製を行いました。本発表では、この当財団作製培地と市販培地を用いて、増殖能や心筋分化能の比較検討を行った結果を示しています。
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坂野 香穂、桑原 順一、梅景 雅史、塚原 正義
簡易閉鎖型培養装置によるiPS細胞の培養
再生医療に用いる細胞製造のコストダウンを達成するためには、大規模な製造設備を必要としない、小型の閉鎖系自動培養装置の開発が非常に重要です。本発表は、その設計およびプロセスを構築するための第一段階として、簡易型の培養装置を試作し、iPS細胞の培養を行った結果を報告するものです。
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中島 義基、塚原 正義、羽根田 聡、井口 博貴、清水 英子、Minh NT Le
足場材料としてパターンドットを生かした臨床用iPS細胞製造の品質管理を制御する仕組みの理解をめざして
均一なiPS細胞を培養するための新たな足場材とコーティング方法を開発する目的で、様々なコーティングをしたプレート(積水化学工業株式会社製)を用いてiPS細胞を培養しました。その結果、コーティングパターンに合った均一な大きさのiPS細胞のコロニーが観察され、また未分化状態も維持されていました。
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羽根田 聡、井口 博貴、長谷川 光一、清水 英子、Minh NT Le、塚原正義、中島 義基
細胞製造を指向した多能性幹細胞用新規化学合成足場材の開発
iPS細胞の品質向上や製造の安定性を目的に検討を行った結果、従来にない高い細胞親和性を有する樹脂を見出すことに成功しました。この樹脂に接着したiPS細胞は、良好に増殖することができ、また未分化能状態も維持されていました。
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塚原正義、高須直子再生医療用iPS細胞ストックの現状と課題
他家移植の課題である免疫拒絶を回避するため、当財団で精力的に開発を行っているHLA遺伝子の一部を改変(編集)した新たなiPS細胞ストックについて、その作製方法やスクリーニング手順、評価結果を詳細に報告したものです。
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山中 伸弥iPS細胞研究財団の発足~これまでとこれから~
2020年4月、当財団は、iPS細胞研究所(CiRA)から医療用iPS細胞の製造、品質評価、研究開発を行う部門を分離して設立されました。本発表は、CiRAの頃から行ってきた再生医療用iPS細胞ストック事業の紹介や財団設立の理由、また今後の展望などを山中理事長が講演したものです。
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RAFAL P. KROL、MASAYOSHI TSUKAHARA、NAOKO TAKASU
Single-cell cloning of induced pluripotent stem cells using CellCelector™ and nanowell plates
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梅景 雅史臨床用iPS細胞製造のためのセルカウント法について
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Rafal P. Krol、塚原 正義、髙須 直子
Single-cell cloning of induced pluripotent stem cells using CellCelector™ and nanowell plates
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加藤 智朗、梅景 雅史、高橋 朋子、天野 直己、野村 真樹、沖田 圭介、塚原 正義、髙須 直子iPS細胞株における染色体コピー数異常の発生原因探索
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塚原 正義、髙須 直子マイiPSプロジェクト:課題と取組み
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塚原 正義、坂井 一郎、平野 智子、田中 龍太、毛利 美幸、冨岡 亮作、土肥 浩美、髙須 直子低エネルギー電子線による細胞・培養液入り基材の滅菌の有効性と課題
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高須直子特集によせて
生物工学会誌 100巻12号:646-647 (2022) -
望月綾子臨床用iPS細胞の品質評価国際標準化に向けた取組み
生物工学会誌 100巻12号:666-669 (2022) -
塚原正義、高須直子臨床グレードiPS細胞の作製 安全・安定な細胞製造のための管理, 評価, 保存
実験医学 38: 14-19(2020) -
花谷忠昭、高須直子iPS 細胞ストックプロジェクトの現在と将来
臨床病理 65 : 160-166(2017)
学会発表・講演
■■2023年■■
【第22回日本再生医療学会総会】
■■2022年■■
【第21回日本再生医療学会総会】
■■2021年■■
【日本放射線影響学会 第64回大会】
■■2020年■■
【ISSCR 2020】
【第19回日本再生医療学会総会】
和文雑誌・総説
■■2022年■■
■■2020年■■
■■2017年■■