お知らせ日立造船株式会社との再生医療等製品に対する電子線滅菌の有用性検証に関する共同研究にて、培養室に原材料滅菌用のプロトタイプを納入しました。

2020.10.06
研究活動

 公益財団法人京都大学iPS細胞研究財団(京都市、山中 伸弥理事長、以下、当財団)と日立造船株式会社(大阪市、三野 禎男社長兼COO、以下、日立造船)は、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)内に設置された、再生医療用iPS細胞の製造・品質試験等を行うための施設である細胞調製施設(FiT:Facility for iPS Cell Therapy)において、「細胞調製施設用電子線滅菌装置の有用性に関する研究」を令和元年8月1日より共同で開始していますが、日立造船は電子線滅菌技術を活用した原材料滅菌用の小型プロトタイプを製作し、令和二年7月17日に当財団の細胞培養室へ納入しました。

 再生医療等製品は、ヒト由来の細胞・組織から得た、生きた細胞等を用いるため、2019年に厚生労働省より発出された「再生医療等製品の無菌製造法に関する指針」に従い、全工程を無菌操作で行う必要があります。
 CiRAのFiTはもとより再生医療等製品の製造施設においては、細胞の培養や保存等のための細胞調製施設(CPC)やアイソレータシステム、バイオハザード対策用安全キャビネット等へ細胞や培地ボトルなどの原料・原材料を導入する際、外面の除染を目的に、アルコールを用いた消毒等が行われていますが、手作業で手間がかかることや、一部の微生物(バチルス類など)を滅菌できないことなどが課題となっていました。また、電子線を用いる滅菌法も従来から存在しましたが、短時間で滅菌ができるものの大きな装置を必要とすることが課題となっていました。
 日立造船がこのほど納めたプロトタイプは、細胞や培地ボトルなど消毒以外の手法を適用しにくい原料・原材料に対し、電子線滅菌技術を適用するためのものであり、日立造船独自の低エネルギー(90~150keV)照射機により、製造設備に併設できるほどの装置サイズを実現しております。

 両者は今後、細胞培養室で電子線滅菌装置の有用性や適格性、運用方法等を検証していきます。本技術の有用性が確認されると、細胞等を短時間で迅速導入するとともに無菌レベルの適切な管理が可能となります。


 なお、日立造船が納めたプロトタイプの概要は次のとおりです。
1.装置寸法:W980 × D745 × H2050 mm
2.重量:約600kg
3.滅菌可能な容器のサイズ:Φ90h100mm以下
4.滅菌能力:無菌性保証水準 (SAL) 10-6程度
5.処理時間:500mLボトルの場合、5分以内

【装置外観】 20201006_1.jpg ※手前から2番目の装置が今回導入したプロトタイプ。
 左側の安全キャビネットへと滅菌した原料・原材料を導入する。